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海の日

銀魂の小話置き場兼、感想とか語りとか。わりと腐向けです。

 

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『耳に残るは、君の歌声』 

万誕記念に、数年前の書きかけをお蔵出し。
なので、誕生祝なのに辛気臭いお話です。ちょっぴり万また。

動乱篇直後の傷心万斉くん。






どいつもこいつも、人をただの伝言板か何かだとでも思ってんのか。


 自分だけを降ろして遠ざかって行く屋形船を見送りながら、万斉は胸の内で吐き棄てた。
 ヘッドホンをずらして耳を澄ませば、船から聞こえてくる三味線と魂の音。どちらも荒れている。音が飛んでリズムが狂って、それにまた苛々している様子が手に取るようだ。
 真選組を潰し損ねた事など、本当はどうでもいいんだろう。
 高杉の魂のリズムが乱れたのは、白夜叉の言葉のせいだ。「護りたいものは変わっていない」と言ったあの男の言葉にだけ、高杉の音が揺れた。

 高杉晋助と坂田銀時、そして桂小太郎。
 攘夷戦争を共に戦った元同志、としか聞いていない。しかし、それだけで魂の音が一つになるはずがない。
転調を重ね、テンポも変わり、異なる音色で奏でられた三者三様の曲。まるで違う曲にしか聞こえないのに、注意深く音色に集中すれば、三つの魂はすべて同じメロディを奏でていた。
初めて気がついた瞬間、背筋が震えたのを覚えている。

 今でもはっきりと思い出せる。
 紅桜事件の折に船上で聴いた、あの嵐のような魂の共鳴を。



 遠く離れた春雨の宇宙船にいても感じられた。あの喧騒の中でひときわ強く、人を惹きつけてやまない、三つの魂の音色。
 各々が、曲調もリズムも違っていたはずなのに。触れ合った途端、それらはごく自然に交じり合って完璧なハーモニーを奏でた。
 渦巻くように一つに収束したメロディは、離れ離れになっても、いつまでも、こだまの様に響き合っていた。
 何度も何度も、繰り返し呼び合うその音色は、まるで望郷の歌のようだった。
 もう戻れない場所だと知っているのに、それでも愛しく懐かしい。


 ひたすら前に突き進む男と、ただ今を護ろうとする男と、過去を手放さない男が、互いに手の届かない場所から同じ歌を恋しがっている。
 滑稽だ。
 歩み寄るつもりも無いのなら、いっそ忘れてしまえばいいのに。




「万斉先輩!一人ッスか?晋助様は?」

 不意に呼ばれて船着場の上に顔を向けると、夜目にも鮮やかなピンクの着物が視界に飛び込んできた。
 まったくけしからん。この娘はまたそんな短い着物で、脚を広げて仁王立ちなぞしてからに。

「…パンツが見えてるでござるよ、また子殿」
「へ…ぎゃあああああ!」
 色気のない悲鳴上げて隠すくらいなら、最初からそんな丈の着物を着るな。
 やれやれとため息をついて、適当に慰める。
「心配せずとも染みはなかったでござる。それと白はなかなか清楚で良い」
「ほんっと、アンタのそーゆーとこがデリカシーないっていつも言ってんスよ!」
 着物の色に負けぬくらい顔を赤くしたまた子が、噛み付きそうな顔で叫び返した。残念ながら、気遣いはお気に召さなかったらしい。
「承知した。これからは黙っておくとしよう。ごちそうさまとでも思って晩のオカズに…っと」
 言いながら、横に跳ぶ。万斉の足元の桟橋に銃弾が数発打ち込まれて、木片が飛び散った。発砲音が小さいところをみると、サイレンサーをつけているようだ。

「避けんなコラァァァ!!!」
「それはちょっと勘弁でござる」
 避けなければコートに穴が開いてしまうではないか。
 ぼやきながらトントンと河岸の上まで跳んで間合いを詰め、安全装置の上から拳銃を押さえつけた。
 また子の場合、銃は打撃用の武器にもなるから接近した時は直接押えた方がいい。

「まぁたこどのぉー、住宅街で発砲はいささかお転婆が過ぎよう?」
 まあ、サイレンサーがついていただけ上出来だ。しばらくは真選組も大人しい事だろうし、街中で多少銃声がしようと取締りに来る可能性は低い。
「黙れ変態」
 フン、とそっぽを向いて、また子はその手をはね除けると、銃を懐にしまい込んだ。
 変態じゃねーよ、と胸の内だけで反論する。年頃の男が若い娘の生下着で発情するなら、問題なく健康で正常だ。
 世の中には幼女や刀に欲情する男もいるのだから、そういうのをこそ変態と呼ぶべきだ。


「で、晋助様は?」
 改めて初めの問いを繰り返す。
 そもそも彼女は、高杉をアジトまで案内するために波止場で待機していたのだ。目的の人がいなくては話にならない。
「今夜は帰らん」
 あまりその件について詳しく話したくなかったのでそれだけ答えると、「えー」と名残惜しそうにまた子の視線が川面をさまよった。

 だから、拙者は伝言板ではないと言うに。




 晋助がいないならば仕方ない。もう帰るぞと二人連れ立って、夜の街を並んでぽてぽてと歩く。
 他人が見れば、深夜に派手な格好で街歩きする頭の悪そうなカップルに見えるに違いない。
 まったくもって不本意だ。

「そういやバイクは?あれ乗って帰れたのに」
「壊れてしまったでござる」
「事故?」
「まあそんなところでござるな」
「その怪我、バイクで転んで怪我したんスか?ダッサー」
 体中包帯だらけの姿に今まで特にコメントが無かったが、一応気がついてはいたらしい。
「いやコレは…。…三味線を弾いていたら天然パーマの男に突如木刀でヘリコプターに叩きつけられてそのままヘリコプターごと地面に落とされて…」
「ヘリごと落ちたぁ?なんで生きてんスか。普通死んでるっスよバカじゃないの」
 そこか。ツッコミどころそこか。
 だいたい風邪じゃあるまいし、馬鹿と生存率に何の因果関係があるんだ。生きてて悪いか。
「で、怪我の具合はどーッスか」
 ムッとしたタイミングで気遣われた。怒りの持って行き所がなくなったので仕方なく飲み込む。
「…突き指を少々」
「…ああそうッスか」
 そこはツッこんで欲しかった。どう見ても満身創痍なのに。
 いやあ、実はあと何ヶ所か骨折と打撲と裂傷と火傷と、ちょっぴり心の傷も。とか言ったらまた鼻で笑われそうだったので、黙っておいた。


 いくら別働隊だったとは言っても、あれだけの大きな作戦。何があったのか知らぬはずはない。
 怪我以上に少し気を遣われているような気配を感じて、何とはなしに腹が立つ。
 もしかして、自分は失敗したと思われているのではなかろうか。
「今回の作戦は、春雨密航のための牽制でござるから、成功でござるよ」
「別に、失敗したとか言ってないッスよ」
「別に拙者も事実を述べただけにござるし。ノれぬから引いたまででござるし」

 我ながら、無茶苦茶に言い訳じみている自覚はある。ただの八つ当たりだ。
 
「アンタや仁蔵の言う事って、たまにさっぱりわかんないッス。キラキラとか、チャチャチャとか」
 はて、ラテン音楽の話などいつしたのだろう。記憶に無い。
「いや違うな、チャッチャッチャッチャ?」
「それじゃタンゴでござる」
「だからわかんねーって言ってんスよ!わかる様に話せっつー事!」
「致し方ない。男にはみな己の世界があるでござるよ」
「なんスかそれ」
「例えるなら空を駆けるひとすじの流れ星?」
「わかった。要はただのバカってことだ」

 男のこだわりを「バカ」の一言で片づけようとするのは、おなごの良くない所だ。「でも其処が好き」と続けてくれるなら、まだ可愛げもあろうに。

「…すまぬ。八つ当たりだ」
「はぁ!?なんスか急に。気持ち悪っ」
 めずらしくこっちから折れてやったというのに、ひどく不審そうな顔で聞き返された。やかましい。喧嘩する元気が無いんだから静かにしろ。
「ちょっと疲れたんでござる。」
「なんかホントに今日オカシイッスよ?」
 大丈夫ッスか?という言葉が、シャン、と鳴る鈴の音のように聞こえた。
 自分だけに向けられた音は、やはり心地いい。
 もっと近くで聞きたくなって、特に考えもせずに細い腕をつかんで引き寄せた。


***


「何なんスかいったい。サカってんの?」
「そのような元気はない。疲れた時は、甘いものを食べるかか動物に触るが良いと、お昼のテレビでみのさんが」
「…誰が動物ッスか」
「何もせぬゆえしばらく肩の一つも貸すでござるよ」
 夜道でいきなり抱き付いておいて、何もしてないって言うつもりかこの男。金取るぞ。
 急に抱きつかれた時は脚の一本でも撃ち抜いてやると思ったが、害意はなさそうなのでとりあえず黙って抱かれてやった。
 たまには男と接触した方が、ホルモンの出が良くなって肌がきれいになるってテレビで上沼恵美子が言ってたから。

「そんな落ち込まなくても、晋助さまだって怒ってないッスよ」
「…違う…」
 失敗してない、とやっぱり言い張っている。真選組潰してくるって偉そうに出て行ったくせに。
「じゃあなんでへこんでんッスか」
「昨日は何曲も、名曲を聴かせてもらったんでござるが…」
「へー」
「すべて他人に向けてで、拙者は聞くだけで。それが少々面白くないと言うか。端的にいえば、ムカついたでござる」

 なるほど、わからん。
 ただ一つわかったことと言えば。

「誰か死んだの」

 『人が死ぬ時の輝きは美しい』と仁蔵は言った。
 『人が死ぬ時の魂の音は綺麗』だと、この男も言っていた。
 こいつら真性の変態だと思ったから良く覚えてる。
「おなごは恐ろしいでござるな。 些細なことを実に良く覚えている」

 肩の上に乗っかっている頭が、小さく震えた。急に花粉症か風邪でも引いたのかと思うような声だった。 

「ときにまた子殿。おぬし歌は得意でござるか?」
「なんスか、アイドルならやんねーッスよ」
 芸能界に興味ないッス、と答えたら至極真面目な声で、
「拙者もそこまで無謀ではござらん」
 とプロデュース拒否された。一回金玉蹴ってやろうかこのツンツン。

「何でもいいから、一曲だけ聞かせてくれ」
 何でもいいといわれても、急に路上ライブできるほど歌は得意じゃない。
「間違ってても笑わないッスか」
「笑わぬ」
「下手でもいいんッスね」
「かまわぬ」
 まったく、変な男。
「…なんかリクエストは?」
「ではお通殿の『お前の母ちゃん何人だ』」
「ムリ。歌詞わかんねーッス」
「…120万枚も売れたのに…」
「『ポリ公なんてクソ喰らえ』なら歌えるッスよ。CD買ったから」
「どうしてまた」
「あれ、好き」
「…どうも」
 返事が遅れたと思ったら、歌を褒められて照れたらしい。バカだ。こいつほんとバカだ。 

「妙なところでテレんなバカ男」
「変なところでデレるなバカ女」


***



 歌が聞きたかった。
 己のための歌が。
 何でもいい。
 ヘタクソでも薄っぺらでもチープでも、自分のための歌ならそれでいい。
 もう、自分ではない『誰か』のための歌ばかり聴かされるのにはうんざりだ。

 魂を響かせた音には、感情が宿る。
 強い感情は、常に誰かに向かっている。
 友情も恋心も、憧憬も敬慕も愛着も、憎悪や怒りや悲しみさえも。 
 誰かを強く想えばこそ、魂が歌う。
 相手の心に届いてほしい、相手の心を動かしたいと。

 全身全霊をかけて、誰かのためだけに奏でられた曲と、魂のすべてをこめて、それに応えた歌。
 『殺してやる』と、白刃で突きつけられた殺意でさえ、応えてくれた証なら、魂が高鳴るほど嬉しかったのか。
 あれほど孤独を嘆いていた魂が、満足げに響いていた。

 あの日の三重奏も、今夜の協奏曲も、素晴らしい演奏だった。
 当事者の視界にすら入る余地の無い、己の存在が馬鹿馬鹿しくなるくらい。
 一番近くにいたのは自分なのに。どんなに近くで聴いていようと、自分は拍手一つ期待されない、ただの傍観者にしかなれなかった。

 あんなにも美しい歌が、届けたい相手には聞こえないのが悲しかった。
 聞こえないはずなのに、それでも何故か響きあっているのが妬ましかった。
 盗み聴きのような真似をしている自分に、吐き気がするほど嫌気がさした。
 なのに思い出せば、今でもあれらの音色に感動する。


 それが一番、悔しかった。


 だから、誰かに歌って欲しかった。
 下手くそでも薄っぺらでもチープでも。
 たとえその音色が同情でも、自分のための歌ならば、その方がずっといい。

 調子外れの歌声に乗せた彼女の魂の音色は、しゃんしゃんと優しい鈴の音の様に聞こえる。鈴の音に耳を澄ませば、脳裏にこびりついた忌々しいメロディを、その間だけは忘れていられた。


***


 歌はとっくに終わっているのに、腕は離れて行かなかった。
 最初ほど強い力ではなくなっているから、振り払えそうな気もしたけれど、今はただ暖かいだけでそんなに嫌ではない。嫌いな相手じゃないのなら、誰かに思い切り抱き締められるのは、本能的に心地いい。

「万斉せんぱーい。…聞いてるっスか、河上万斉?」
 名前を呼ぶ。
 返事はない。ただの屍のようだ。
 頭を撫でた。
 反応もない。ただの屍のようだ。

 仕方ないなぁ、と、気が済むまで待ってやる事にした。
 今は些細な事で、この男を立たせている、なけなしの意地や見栄が折れてしまいそうだったから。
 腕を伸ばして背中を抱くと、少しだけ重さが増した。手が回りきらないほど広い背中のくせに、小さな子供のように感じて,少しだけかわいいと思ってしまった。
 黙って、ぽんぽんと背中を叩いてやる。
 いい女ならこんな時上手い事言えるのかもしれないけれど、正直かける言葉なんて思いつかなかった。


 元気出せとは言えなかったし。



 泣いてるの、とは聞けなかった。










せっかーいもなみだも全てをわーすーれーて 素敵なあなたにうったわーれーたーいよー♪
書いてる途中で『アナタMAGIC』がOPになって、テーマがかぶったからお蔵入りしてました。


こっちは真面目に働いてるってのに、どいつもこいつも。
自分の手で殺してやるとか言われて喜んでんじゃねーよ。やってられねーよ、誰か俺を慰めろ。

category: 銀魂-小話

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