海の日

銀魂の小話置き場兼、感想とか語りとか。わりと腐向けです。

 

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『貴女は僕の太陽だ』 

沖田誕に出しそびれ、新八誕に出遅れた10代トリオのお話。
名前なしのモブキャラがちょこっと出てます。

新八と沖田君と神楽と、ちょっぴり銀さん。






「タラタラ歩いてんじゃないネ、新八ぃ!!」
「神楽ちゃ~ん、だったらせめて荷物持ってよぉ~」

 スーパーからの帰り道。持ち手がちぎれそうなほど延びきったビニール袋を両手にぶら下げた新八は、定春の上で足をぶらぶらさせている神楽に訴えた。
 今日は週に一度の特売日だ。卵のパックと牛乳を4つずつ買ってきたりしたせいで、とにかく重い。しかも出稽古があったから、背中には木刀と防具一式も背負っている。
 力は新八よりあるくせに、身軽に定春に乗っかっている神楽に半分持ってもらっても罰は当たらないはずだ。
「なーに腑抜けたこと言ってるネ!買い物帰りに女の子に荷物持ちさせるような男は、マダオへの道まっしぐらアルヨ。レッツゴー熟年離婚ヨ。マイホーム取られて、年金も分割されて、哀れダンナは濡れ落ち葉ネ」
「またどこかで変な知識を仕入れてきたね…」
 神楽の変に老成した知識の情報源は、主に女性週刊誌と新八の姉をはじめとする年上の女友達だ。
 しかも彼女らの職業が偏っているせいで、男に対する評はたいてい辛い。
 結局、新八は反論するより黙って歩くペースを速める方を選択した。



 万事屋までの近道である、大通りから一本外れた裏通りを歩いている時だった。

「はーい、そこの軽車両、停車してー」

 2人の背後から、ぴぴいという甲高いホイッスルの音と、聞き覚えのある声がする。振り向けば、口元に銀色のホイッスルを咥えた警官が手を上げていた。
「あ、沖田さん」
「ゲ、不良警官」
 顔をしかめる神楽を無視し、沖田はぺちぺちと側にあった道路標識を叩いてみせた。
 標識に描かれたマークは、『一方通行』。

「いけねーなァ、お二人さん。この道路ァ一歩通行だぜィ。おてんと様の下で堂々と公道逆走ときちゃー捨て置けねーや」
「バカ言ってんじゃネーヨ、税金泥棒!どこに車があるネ?とうとう頭までイカれちまったアルか」
「そっちこそ何言ってんでィ。車両ならテメーが今乗ってんじゃねーか」
 そう言って沖田が指差したのは、白い狛犬。
「わん!」
「アホか!定春は生き物ネ!車じゃないアルヨバーカバーカ!」
「道路交通法じゃ馬も牛もでけぇ犬も、まとめて軽車両なんでィ。バカって言った奴がバーカ」

 つーわけで、一方通行逆走に一時停止無視、それにノーヘルときたもんだ。こりゃ何点減点かねェ。
 はい免許証出してー。んなもんねぇってか。なんでぃ無免許かよ。こりゃいけねぇや。罰金だなー、コレ、罰金。いいから黙って有り金全部置いてきなぁ。

「犬に乗る免許って何ですか、沖田さん」
 あんまり無茶苦茶言ってると、近藤さんに言いつけますよ。と、溜め息まじりに新八がツッコむ。
 新八的に、沖田のボケはいまいちツッコミづらくて苦手だ。歳が近いせいか、相性の問題なのか、正直どうも絡みにくい。
 桂や近藤相手なら遠慮せずにポンポン言える事が、沖田相手だと加減がわからない。
「ハイそこの眼鏡、公務執行妨害追加ぁー。お巡りさんの心を著しく傷付けたー」
「あんたそんな傷つきやすいグラスハート持ってないでしょうがァ!!!!」
「うるせぇ、ドSの打たれ弱さ舐めんじゃねーぞコラ」
「知るかァアアア!!!」
 でもやるときゃやりますよ。新八ですから。



 ひとしきり因縁をつけたら満足したのか、沖田は書きかけの調書をくしゃくしゃに丸めて捨て、新八がぶら下げたビニール袋を覗き込んだ。
 本日特売の卵パックや、いちご牛乳。さやえんどうの袋も見える。

「なんでぃ、買出しの帰りかぃ?」
「そうですよ。別に怪しい物は入ってませんよ」
「そりゃこっちが決めることでぃ。ちなみに今夜の晩飯は?」
「それも職務質問なんですか?」
「質問してんのはこっち」
 むう、と機嫌を損ねた顔で、再度沖田が首を新八に向ける。珍しく、今日は神楽より新八の方に積極的に絡みに来る。新八が沖田を苦手としてるのと同様に、沖田も新八を避けているような気がしていたのだけど。
「ちらしずしの予定ですよ」
「姉御が作りに来んのかィ?」
「まさか。なんで銀さんちで暗黒物質作るんですか」
「じゃあ旦那のお手製で?」
「そうですよ。銀さんああ見えて割と料理するんですよ?」
 へえ、となにやら形のいい顎に手を当てて思案している。
「じゃあ、罰金代わりに俺も今晩の晩飯、相伴に預からせてもらおうかね」
「え?今日ですか?」
「ダメかぃ?」
「僕はいいですけど。そっちはいいんですか?近藤さんとかに連絡しないと心配するんじゃ…」
「しらねーや。二人で黙って寿司食いに行っといて、土産がカッパ巻きとか抜かすふざけた奴等に義理なんざあるかってんでぃ」 
 要約すると、どうやら昨夜、近藤と土方が二人で飲みに行ってしまい、置いてかれた上に土産が気に入らなかったので拗ねているらしい。
 そこまで黙ってそっぽをむいていた神楽が、猛然と割って入ってきた。
「いいわきゃネーダロ!なんでうちがよその子のご飯まで恵んでやらなきゃいけないアルか!ご飯時にお宅訪問なんて、発言小町に投稿したら奥様方からフルボッコネ!」
「神楽ちゃん、悪いこと言わないから、しばらく発言小町は見るのやめな?幸せになれないよ?」
「いいじゃねェか。減るモンでもあるめーし」
「確実に分け前が減るアル!こちとら実の兄ちゃんとだってご飯の時はタマの取り合いだったアル。よその子に食わせる飯は無いネ!」
「よその子よその子って、テメーだって旦那んちの押しかけ居候じゃねーか。この不法滞在の密入国者」
「パピィ来た時にちゃんと手続きしたアル!」
「あれー、あん時の書類捨てちまったかもなぁ」
「テメェェェ!!!!」


 …また始まった。
 暴れ出した二人の邪魔にならないよう、新八はいつもの様に数歩後ろに下って距離をとった。
 こうなるとしばらくは手がつけられないのだけれど、ビニール袋の中には生ものも入っている。新八としては、なるべく早く帰って冷蔵庫に収めたいところだ。
 困ったなぁ。どうせ沖田さんご飯食べに来るなら、神楽ちゃん置いていってもいいかなぁ。銀さんに言ってご飯大目に作ってもらわないとなぁ。
 そんな事を思案していたせいか、注意が散漫になっていたらしい。
 背中で誰かに思いっきりぶつかってしまった。

「わ、すいませっ…」
 通行人かと思い、反射的に謝ろうとした新八の背から、するりと木刀が引き抜かれた。
 気づくと同時に真横をすり抜けて、木刀を手にした少年が駆け出す。財布ならともかくなんで木刀、と思うより先に叫んでいた。
「ド、ドロボーーッ!!」
 駆け出した先には、運良く盛大にバトル中の二人が揃っている。 
「神楽ちゃん、沖田さん!そいつ捕まえて!」
「「ん?」」
「どけぇぇぇ!」
 少年が、手にした木刀をぶんぶんと振りながら神楽の方に襲い掛かった。神楽も見た目はただの女の子。おびえて避けるとでも思ったのだろう。だが、

「邪魔すんな」

 少年が振りまわした木刀は、ぺちん、とあっさり沖田の手の平で止められた。どう見ても素人の太刀筋で、沖田にすれば三歳児が棒切れ振り回してるのと変わらない。
 剣先を掴んだまま、スリの少年に話しかける。
「素人が振り回すもんじゃねぇぜ。返しな。こりゃあのメガネの兄ちゃんのだ」
「嫌だ」
「おもちゃじゃねーって言ってんでぃ」
「…だったら代わりに、アンタの刀よこせよ」
「そりゃ聞けねェ話だなァ。こいつがねーと、仕事中に暇つぶしの落語が聞けなくなっちまわぁ」
「沖田さん、それちょっとおかしい!」
 仕事中に暇を潰すな。嘘でもいいから、そこは「江戸の平和が護れない」くらい言ってもらいたい。
 木刀の柄と剣先を握りあったまま、しばし睨み合う。捕まえておいてもらってなんだが、新八は少年の方が心配だった。沖田は子供相手でもほとんど容赦がない。
 末っ子は大抵、自分より年下の子供が嫌いだ。

 時計の秒針が一回りするくらい沈黙した後、ぐいと沖田が引くと、少年はつんのめって木刀から手を離した。
 そのままべしゃりと地面に転び、泥だらけのまま今度はべそべそと泣き出してしまった。
 初めのうちは「泣いて済んだら警察はいらねーんだよ」とか「そんなんで誤魔化せると思ってるアルかこのコソ泥」と責め立てていた沖田と神楽も、ますます激しく泣かれてうんざりした顔で新八を見る。
 見られたって、新八だって困る。

「えーっと…」
「どーすんネコレ」
「しょっぴくのも面倒くせぇや」

 三人の間で「お前何とかしろ」という視線がぐるぐると交わされる。あいにくと揃って下の子なので、泣き出した子供への対処能力に自信がない。
 体験談から言えば、いつまでもびぃびぃ泣いている子供は、素っ裸で雪の中放り出されたり、三日分のご飯を全部食べてしまわれたり、蛇の出る土蔵に閉じ込められたりしたものだ。
 兄や姉は、ニコニコしながらもやることがえげつなかった。
 仕方ないので、三人の中でも比較的まともに話の出来そうな新八が「どうしてこんな事したの?」と尋ねたところ、少年は鼻を啜りながら切々と身の上話を語り始めた。


 ――話をまとめると、こういう事らしい。
 
 両親を早くに亡くした少年は、姉一人弟一人の身の上で暮らしている。
 母親の記憶などほとんど無い少年にとって、苦労しながら自分を育ててくれた姉はたった一人の家族であり、母親に等しい存在だった。
 その姉が、先日バイト先のオーナーでもある、とあるセレブに見初められ、このほどめでたく嫁ぐ事と相成った。
 だがその矢先、姉の婚約者が裏で違法な取引を行っている悪徳商人だった上に、実はホモで外に愛人も居て姉との結婚はカモフラージュだったことを知ってしまった。
 真実を話して姉を傷つけたくない少年は、単身婚約者の元へ乗り込んで、姉との婚約を向こうから破棄するよう脅すつもりだったらしい。
 そのための武器が欲しかったのだと。


 なんだかいちいちどっかで聞いた事のある話だ。
 一通り聞いたところで、神楽は斜め後ろに首を回してそこにいる二人を見た。右に新八。左に沖田。
 案の定、揃って変な顔をしている。
 道の向こうから、おんなじ柄のTシャツ着てる奴が歩いてくるのを見つけてしまった時の様な微妙な顔。
 そういう顔してると、テメーら設定だけじゃなくて顔のつくりまで被ってるのバレるからやめとけと教えてやるべきだろうか。 神楽は一瞬そう思ったが、めんどくさいのでやめた。
 代わりに、もう一度正面の少年に視線を戻す。



「そんなことしたって姉ちゃんは喜ばないアル。どうしてもヨメに行ってもらいたくなかったら、さっさとお家に帰ってヤダヤダオヨメイカナイデー!って泣き落としでもした方がマシネ」
 神楽にバカにしたようにあしらわれて、少年は涙目のままキッと顔を上げた。
「俺は、嫁に行って欲しくないなんて言ってない!姉ちゃんに幸せになって欲しいだけだ!」
「それこそ姉ちゃんが決める事ネ。悪人だろーがホモだろーが、ハゲで変態だろーが、姉ちゃんが惚れて結婚するって決めたならそれが姉ちゃんの幸せヨ。イチャモンつけてねーで弟に出来るのは赤飯製造マシーンになるくらいアル。どうせお前みたいなのは、相手が将軍でも石油王でも、向井理でも嫌だって言うに決まってるネ」
「姉ちゃんは騙されてるんだ!大体、こいつの顔見てもそんな事言えるのか!?」
 そう言って少年が懐から取り出した写真には、丸顔の可愛らしい顔をした女性と、黒光りするハゲ頭のトドが映っていた。
「…お前の姉ちゃんの婚約者、天人アルか?トド星人?」
「正真正銘の地球人だよ」
「…諦めるネ、お前の姉ちゃん明らかに金目当てヨ」
「ちがわい!うちの姉ちゃんはちょっと男の趣味が悪いだけだ!」
「趣味悪いにも限度ってモンがアルネ!」
「わかるぜ…、うちの姉上も男の趣味は最悪でなァ」
「僕の姉上は、理想が高いんですよねぇ…」
 後ろでは使えないシスコンコンビが共感している。誰もお前らの姉ちゃんの話なんて聞いてない。

「そんな顔のくせに、あいつ外に愛人もいるし、犯罪者なんだぜ。祝福なんてできるかよ」
「だいたい、それどこ情報ネ。確かアルか?」
「確かだよ!オレ、寺子屋サボって姉ちゃんのバイト先に一週間張り込んで、ずっとあいつ尾行してたんだからな!」
 駄目だこいつ…早くなんとかしないと。
「あぁ、わかるよー。僕も姉上のバイト先を覗きに行って、よく見つかって殴られたから」
「ばっかでぃ、そんなら盗聴器の2つ3つ、仕掛けときゃいいじゃねーか」
 こいつらはもう手遅れだ。


「そいつの周りには、いつも物騒な奴等が用心棒に張り付いてるんだ。だから俺、せめて刀でもあればって…」
「プロの用心棒がいるってぇなら、おめーごときが真剣持ってったとこでボコボコにされてしめーだぜぃ」
「そうだよ、ここは警察の人とかに任せて…」
「嫌だ」
 同病相哀れんだのか、諭すように声をかけた二人の言葉が遮られる。
「誰がなんと言おうと、俺が姉ちゃんを護るんだ。護らなきゃいけないんだ」
 白けた顔の神楽の頭の上で、沖田と新八が横目で視線を交わした。

「…仕方ねーなぁ」
「…そういう事なら」

菊一文字を帯刀し直し、沖田が少年の右に立つ。
木刀の柄に手を掛けて、新八が少年の左に立つ。

「真選組一番隊隊長、沖田総悟」
「天堂無心流恒堂館当主、志村新八」


「「義によって助太刀致ァす!!」」










ごすごすっ



「いったァァァァ!!何すんのォ神楽ちゃん!?」
「なにすんでぃ、今いいトコだっただろーが」

多分、週刊少年ジャンプだったら、いい感じのアオリが入って『次週へ続く』場面だった。
せっかくの決め台詞の直後、沖田と新八の頭部には神楽の空手チョップが炸裂した。

「黙れヨ!何が助太刀ネ!!カッコつけてんじゃネーヨ!いいからちょっとそこ座れやこのシスコントリオ!!」
 三人並べて路上に正座させ、正面に仁王立ち。通行人がもの凄く見てるが知ったことか。
「さっきから黙って聞いてりゃ、なにシスコンの絆深めまくってヒロイズム気取ってるネ!全然助太刀の理由になってネーヨ!」
「だって…可哀想だったし…」
「そもそも普通シスコンと言えば、妹萌えアルよ。姉萌えなんてニッチな市場で、レギュラーのくせに被ってるなんて、いかにキャラ付けの被りっぷりに定評のある『銀魂』でもちょっと問題あると思わねぇのかヨ、てめーらは!!シスコンとグラサンはもうお腹いっぱいですって誰かあのゴリラに言ってやれヨ!」
「神楽ちゃんなんか話がずれてる…」
「言っとくがなチャイナぁ。ムーブメントってェのは、流されるもんじゃねーぜ。作るもんだ」
「沖田さんいい事言いますね!これからが僕らの時代ですよね!」
「時代が俺達に追いつくんでぃ」
  
 それは、あれか。
 姉萌えがくるってか。
 
 正ヒロインにして妹キャラの自分の前で、姉萌えの時代がくると言いたいのかこいつらは。
 よろしい、ならば戦争だ。
 見ててヨ、そよちゃん!鉄子にクリステル!大江戸の妹萌えムーブメントは私が護ってみせるネ!
 私達妹キャラの存在、天下に知らしめてやるアル!

 夕焼け空に向かって拳を握り締め、居並ぶ妹キャラ達に戦いの勝利を誓った神楽がもう一発殴ろうと振り返ると、そこにはスーパーの袋と真選組の隊服だけが残されていた。
 

「神楽ちゃーん、生ものが痛むから、先に帰ってそれ冷蔵後に入れておいてー!」
「上着預かっときなチャイナァ!真選組ってバレると拙いんでなァ!」
「ちょ、待てコラァァア!話は終わってねーんだよォ!」
「えーっと、なんか知らないけどごめんなさいおねーちゃん!」

 好き勝手なことを捨て台詞に、シスコントリオは辻を抜けて行ってしまった。
 ひゅるりと冷めた風が落ち葉を飛ばす。

「…行っちまったアルよ」
 スーパーの袋置いて。
 隊服も置いて。
 パシリのくせに。
 真選組のくせに。
 完全に職務放棄だ。
 
 家庭も省みずに仕事ばっかりしてたうちのパピーをちょっとは見習え、ダメ男ども。甲斐性なし。シスコン。バーカ。
 天国のマミー、男の人は仕事が生きがいなんてウソばっかりネ。うちのパピーは、ただのワーカホリックだったアル。仕事に逃げてたアル。
 だから息子がグレちまったのに、半殺しにするしかなくなっちゃったアル。

「…帰ろ、定春」
 わぉん、と愛想よく定春が鳴く。その背に、スーパーの袋と沖田の上着を引っ掛けて、神楽は不貞腐れたまま家路についた。




=====================================================




 玄関の戸が開く音がして、銀時は寝転がっていたソファの上から時計を見上げた。
 買出しに行っていた神楽と新八が帰って来たのだろうが、随分と遅かったなと思いながら起き上がる。
 のっそりと定春がスーパーの袋を背負ったまま入ってきた。なぜか、見覚えのある黒い上着までひっかけている。

「定春。てめーなんか変なモン拾い食いしてねーだろうな。ゴリラとか」
「わぉーん」
 ご機嫌で尻尾を振る定春の背から荷物と上着を下ろしていたら、後ろから膨れっ面の神楽も姿を現した。
 だが、新八も上着の持ち主の姿も見えない。隊服は、前身の裏に名前の縫い取りがあったはずなのでひっくり返したら一番隊隊長の名が金色に輝いていた。
 つるんで遊びに行ったにしちゃ珍しい組み合わせだな、と思っていたら、ポケットからレシートがはみ出しているのを見つけて抜き取った。
 買物レシートの裏に、新八の字で走り書きがしてある。

『銀さんへ。夕飯までには戻ります。
沖田さんがご飯食べに来るので、夕食は4人分お願いします。(八)』

 なにそれ。
 ご飯作って腕白坊主の帰りを待つのか?俺はお母さんか?

「おい神楽ァ、沖田君とぱっつぁんどこ行っ」
「銀ちゃぁん」
 事情を知ってるであろう神楽に問いかけようとしたら、後ろから急に抱きつかれた。ぐいぐいと、顔を腰に押し付けるように甘えてくる。
「なんだよ」
「…」
「どうした?」
「…メガネ男子なんて嫌いアル」
「…そーか」
「汚職警官は失業するべきヨ」
「そーだな」
「オタクは絶滅するがいいネ」
「うんうん」
「ドSは死ねばいいアル」
「うーん」
「でもシスコンが一番勘弁ならねぇ!!」
「うぉぉぉい!判った!判ったから壁を殴るな!!やめて!壊さないで俺の家!!」
「賃貸じゃねぇかァァ!」
「それを言うな!」

 何があったかは良く判らないが、誰が悪いのかは良く判った。

 多感な思春期に、身近に居た年頃の男子が揃って病的なシスコンだったのは災難と言うしかない。
 うちの神楽のトラウマになったりしたら、どう責任を取らせてくれよう。あのガキども。
 同世代の男に幻滅して、一回り以上歳の離れた大人の男に憧れ出したりしちゃったらどーすんだよ。
 思春期の女の子にありがちな、「やっぱ男は危険な香りのする大人の人でないとぉー」ってやつだよ。
 一回り歳の離れた身近な男っつったらあれだよ?うちの場合、ヅラとか土方君とかだよ?さらに二回り離れたら長谷川さんだよ?
 あんなのにふらっと行っちゃったりしたら、本当にどうしてくれるんだ。確かに危険な香りがするけどね、主に頭の中身とか瞳孔とか。
 いやいや、認めないよ、お父さんは絶対に認めません!!
 そんな事になったら、奴等がロリっつー新しい世界への扉を開く前に、俺の手で人生の幕を下ろしてやる。

 西郷さんちのてる彦くんとか、紹介しとこうかな。年下だけど晴太とか…いやダメだ。あいつらぁマザコンだ 。
 くそう、かぶき町界隈にゃシスコンかマザコン以外で骨のある、オスのティーンエイジャーはいねぇのか?
 フォローだ。気に入らないがフォローのひとつもしてやろう。
 フォロー方に出来て俺に出来ないはずはない。


 ソファの上で膝を抱えて沈んでいる神楽の横に座り、ぽんと頭を撫でる。
「あー、そのー、あれだ。シスコンってシリコンに似てるよね」
 駄目だー、まったくフォローの仕方が思いつかねぇー。
「いずれこの世は姉萌えシスコンに支配されるアル…」
「いやー、最近シャンプーだってノンシリコン流行ってるし、ノンシスコンの時代じゃないかなー、これからは」
「このマンガだって、『姉魂』って書いて『シスコン』って読むようになるネ」
「いや銀さんの髪が銀色のうちはそんなことにはならねーよ?あと魂をコンって読むのはBLEACHだけにしとけ?」
「どいつもこいつも、私の事なんてどうでも良いネ」
「あん?」
「私を置いてく男はみんな大嫌いアル」
 なんだこいつ、寂しかったのか。

「すぐに帰ってくるからよ」
「…パピーもいつもそう言って出て行ったアル」
「男の子ってのはな、何か護りたいって思って初めて本当に強くなろうとするもんだ。あいつらにとっちゃ、それが姉ちゃんだったんだろ」
 だから少しぐらいの暴走も、許してやってほしい。勝手な言い分だとは思うけど。
「護りたいものなんかなくたって、強くなりたいだけの奴もいるネ」
「護りたいものなくして、壊しに走っちゃう奴もな」
  
「そーゆーのは、お互い身内に一人いりゃ十分だろ。こっちもしんどいしよ」



 ぱん、と一つ肩をたたいてから銀時は台所に向かって歩き出す。
「晩飯作るぞ。手伝え」
「…何するアル」
「えんどうの筋でも取ってろ」
「…わかった」
 まだ納得のいかなそうな顔でついてきた神楽だったが、テーブルの上に新聞紙を広げてさやえんどうの筋を取り始めると黙々と作業に没頭し始めた。
 銀時は流しに立って米を研ぎながら、ぼそっと呟く。

「あのな。あいつら確かに甘ったれのシスコンで、根性腐れのオタクに根性曲がりのろくでなしだけどな。俺の知ってる野郎の中じゃ、上から数えた方が早いくれー、見込みのある男だぞ」

「…銀ちゃんの知り合い、マダオばっかネ」
 確かに。でも
「まあパピーの足元くらいになら、届くかもしれないアル」


 それって結構ハードル高いぞ。
 宇宙最強の足元までの道程の長さを思いながら、銀時はいつもより2合多めに米を炊飯器に流し込んだ。

category: 銀魂-小話

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